No.9

(1)  土曜の夜に珍しく旦那が早く帰ってくると食事の後「お前、大学の時、チアリーダーしたことあるって言ってたよな」と言い出しました。 確かに女子大の時に、人数が足りないからと頼まれて、チアリーダーの衣装でサッカーの応援に行ったことが何度かあるので「あるけど、それがどうかしたの」と答えました。 すると「内の会社にラクビー部あったの知ってるだろう、会社のリストラで廃部が決まってね、それで一緒にチアリーダーのチームも解散したんだ」 「大学でチアリーダーやってた女の子を特別に集めて作ったチームだから、みんな他の会社のチアリーダーのチームに移ってね」 「そしたらラクビー部の最後の試合で、優勝しちゃってね」 「今度は学生チャンピオンとの対戦があってそれが最後の試合になるんだが、もうチアリーダーのチームは解散してしまって応援がいないんだ」 「なにしろテレビ中継もあるのに、チアリーダーがいなければ格好が付かないだろう」 「体格が小柄でないと、衣装が入らないから、お前大丈夫だよな」と言われて、テレビに映るならと思い、オッケーすることにしました。 翌日旦那に連れられて競技場に行くと、会社の女子社員の女の子達がかき集められたようで、みんなで着替えをしていました。 私もチアリーダーの真っ赤なミニスカートの衣装を渡されて、着替えを始めましたが、どうしても背中のチャックが閉まりませんでした。 「ちょっとお、小柄でないと、衣装着られないっていっておいたでしょう、あなた何キロあるの」と言われても私は答えられませんでした。 旦那は私が着替えもせずに戻ってきたので酷く機嫌が悪くて口をきいてくれませんでした。 翌日私は体重計を買ってきて、体重を量ってみました。 大学の時より4キロも増えていて、私はどうしようもなく愕然とするだけでした。
(2)  これではいけないと思い私は、体重を落とすためになんとかしようと思いました。 ちょうど近所の恭子さんが駅前のアスレチッククラブに通っているので、一緒に行くことにしました。 受付で入会の手続きをすると、指導員の邦夫さんを紹介されました。 最初に簡単な体力測定をしたあと、一月に1キロづつ無理なく痩せた方がいいと、パソコンに向かいました。 なんでパソコンなんか使うのかしらと思っていると、すぐに練習メニューがプリンターから出てきました。 用紙には私の名前も入っていてずいぶんと便利になったのだと感心しました。 さっそく恭子さんと一緒に準備体操をしたあと、自転車に10分乗る事にしました。 普段なら自転車で10分走るのはなんともないのですが、部屋の中で漕ぐ自転車はなんの楽しさもなく、10分間が一時間くらいにも感じました。 練習が終わったあとは、息が苦しくてしばらくは起きあがれませんでした。 しばらく休んだあと、一緒に練習をしていた恭子さんに一緒にサウナに入っていきましょう誘われました。 私は着替え室でジャージを脱いで裸になりました。 タオルを巻いてサウナにはいるとすぐに体中が汗で一杯になりました。 10分ほど汗をかいてから外にでてシャワーを浴びていると私は大変な事を見つけました。 恭子さんのお尻から太股にかけて紫色の打ち傷がまだらに広がってお尻全体が赤くあれ上がっていました。 私はびっくりして言葉も出ませんでした。 すると恭子さん「ああこれ、いまつき合っている男がいるんだけどね、ちょっと変わった趣味なの」 私はそれを聞いてあの「SM」とか言うのに違いないと気が付きました。 「あなたも、縛られてぶたれたりとか経験あるんでしょう、経験ある同士ってすぐわかるのよね」と聞かれて私は恭子さんになら話しを聞いてもらえると心を決めました。 「この間ね、親戚のお葬式のあとなんだけど、叔父に帰りを送ってもらったらね、ラブホテルに連れ込まれちゃったの」 「あ、やっぱり、それでどうだったの、縛られたの」と言われて。 「そうなの、なんだか手慣れてて、すぐ両手縛られちゃってね、そのあと両足も縛られて宙につり上げられちゃって」と半分作り話しも交えて恭子さんとに話すと、「やっぱり良かったでしょう、一度経験するとやめられなくなるのよね、女の体ってそうゆうものなのよ。それでその後もつき合ってるんでしょう」と聞かれてました。 私ははっきり返事をせずに「ええまあ、と答えました」。 すると「自分から頼まなきゃだめよつき合って下さいって、奴隷にして下さいって」と言うので「こんどそうして見るわね」と答えました。 帰り際に恭子さんに買い物に行こうと誘われて、私は池袋までの地下鉄に乗りました。 窓際で真っ暗な外を眺めながら二人でおしゃべりをしていると急に恭子さんの言葉がとぎれました。 恭子さんのすぐ後ろに背の低い中年の男が腰を押しつけるようにして立っているのが見えました。 いやがりながら苦しそうに眉をゆがめる恭子さんの表情で私はその男が痴漢に違いないと直感しました。 電車が乗り換え駅にで停車すると乗客が一斉に乗り込んできて、私は恭子さんと一緒にドアの角に押し込まれました。 男の指が今度は私のスカートの下に入れられて来るのがわかりました。 私は怖くなって足ががたがた震えてきました。 ようやく駅に着いたとき、私はやっとのことでホームに降りました。 恭子さんの方を見るとその後ろにはさっきの男がぴったりと寄り添っていました。 私は思わず声を上げそうになったとき恭子さんが「紹介するわね、いまつき合ってる人なの」と明るい声で私に言いました。 それを聞いて私は体中の力が抜けていきました。 なんのことはない彼氏と一緒に痴漢ゴッコをしていただけなのでした。 「ねっ、今の携帯で写真とってたのよ」と恭子さんが言うと男が携帯の画面を見せてくれました。 そこには今さっきの恭子さんのスカートの下から撮った写真が表示されていました。 私はあまりのバカバカしさに呆れてきました。 こんなところで立ち話もできないと男に言われて、私達は駅の階段を上がると外にでました。 そのあとは、近所の漫画喫茶に行きました。 漫画喫茶にはインターネットが使い放題になっていて、いま撮った写真を男がホームページにアップロードしていました。 ところで面白い写真があるんだけどと恭子さんが言うので教えられたアイコンをクリックすると、サウナの写真がでてきました。 さっき私が入ったときのサウナの写真に間違いありませんでした。 「こっちをクリックすると動画も見えるのよ」と恭子さんが別のアイコンをクリックすると、さっきの恭子さんと私の会話が画面から聞こえてきました。 「どう、よく撮れてるでしょう」と恭子さんが耳元でささやくと私は体の震えが止まらなくなりました。 「さっきの話し旦那に聞かれたら困るんじゃないの、離婚されちゃうわよ。これで、あなたも私と同じよ、もうこの男に逆らえないのよ」と言われて私は気が遠くなっていきました。 「じゃあ、トイレにきてもらおうか」と男に言われて私は従うしかありませんでした。 トイレのドアがしまると男が私を押さえつけてきました。 私の身体を襲う欲望は、嵐のような激しさでした。 しだいに激しさを増す欲望には抵抗する気力もなくなるほどの荒々しさがありました。 私の体は空高く放り上げられたまま、落ちることを許されずに回り続けました。 信じられない感触が私の体中に広がると、許しを請うことさえできなくなりました。 時計の針が止まると、永遠の時間が私の体を支配していました。 このままずっと続くのなら、私の体はもう屈服するよりないと覚悟を決めました。 男は私の身体を天高く舞い上がらせると、次の瞬間に奈落の底に突き落としました。

(完)

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