No.2
1)
旦那の仕事がずっと忙しくて、土日が休めない週が続いていたのですが、ようやく納品が済んだというので土日に休みが取れる事になりました。
旦那は前々から行きたかったディズニーシーに行こうと言い出して手回しも良く前売り券をインターネットオークションで安く買って上機嫌でした。
明日いよいよディズニーシーに行くという金曜に、親戚から電話がありました。
親友のお父さんが急病で亡くなったのでこれからお通夜にいって、葬式の手伝いをしてくるといいます。
「頼みたいことがあるんだけれど」と言われて私は葬式に呼び出されるのはかなわないと思いましたが、頼み事はそれではありませんでした。
ちょうど私の姪が大学受験のために今日これから新幹線で東京駅に着くと言われました。
試験の間中姪を私の家に泊めて面倒を見て欲しいという頼みでした。
私は断る訳にもいかずに引き受けるしかありませんでした。
旦那に携帯の電子メールで事情を説明すると、折り返しメールが来て、「ディズニーシーの入場券は会社の友達にプレゼントしたから」と返事が来ました。
私は旦那の機嫌が悪くならずに済んだらいしのでほっとしました。
夕方近くに近所の地下鉄の駅で待っていると高校の制服を着た女の子が来ました。
私のいた高校の制服だったので、すっかりなつかしい気持ちがこみ上げてきました。
顔立ちは私の母に似てやや丸顔で、高校生の割にはまだ幼い雰囲気が残っていました。
東京ではまだ中学生くらいの女の子にしか見られないような仕草で、表情も田舎の女の子らしくて純朴な感じでした。
私も高校生の時はこんなだったのかしらと、胸が熱くなりました。
小柄な体の割には胸は人並み以上に大きくて、幼さの残る顔とは不釣り合いな気がしました。
姪は通学用のカバンに受験用の参考書をたくさん入れて持ってきたようですが、他に着替えらしい荷物は見あたりませんでした。
数日は泊まることになるので、着替えくらいは持ってきたほうがよかったのにと思いましたが、何も言わないことにしました。
旦那の部屋に通して、荷物を置かせてひとまずお茶を飲ませました。
姪は落ち着かない様子で、受験会場の場所を確かめたいと言っていました。
私は地図を出してきて、場所を教えて電車の道順も何度も教えました。
姪は東京には慣れていないので、朝起きる時間を何時にすればいいのか分からないので困った様子でした。
ひとまず落ち着くと姪はカバンから参考書をだして、旦那の机に広げて勉強を始めました。
私は邪魔をしてもいけないと思い、旦那が帰るまでそっとしておく事にしました。
(2)
試験の朝、私は心配だったので試験会場まで一緒に行くことにしました。
会場までの地下鉄の道順を何度も確かめて朝早めに姪と一緒に家を出ました。
姪の表情は不安が一杯で、朝の寒さのせいもあって身体も堅くなっている様子でした。
私は自動販売機で二人分の切符を買うと、地下鉄のホームで姪と乗りました。
車内には受験生らしい女の子もいて、参考書を広げて勉強をしているのが目に入りました。
あと数駅で降りる駅と言うとき、急に混雑が激しくなり、姪がドアの角に押しつぶされそうになりました。
そのとき姪の視線が私に向けられて助けを求めるように半分泣き出しそうな顔をしました。
姪のすぐ後ろに身体をぴったりと押しつけている男性が目に入りました。
私はその顔に見覚えがあるような気がしました。
男も私に気が付いたらしくて私と目が合うと口元にいやらしい笑みを浮かべました。
その顔は、私がまだ大学生だったときコーラス部で一緒だった東大の譲治さんに間違いありませんでした。
大学の時からオタクっぽくて人気のない男の子でしたが、やっぱり痴漢まがいのことをしているのだと分かると腹が立ってきました。
私がにらみつけると譲治さんは顔をそらせました。
大学のある駅で降りると譲治さんも一緒に電車を降りるのが分かりました。
地下鉄の階段を上がって駅の外に出ると、すぐ近くに学生の頃よく来ていたケンタッキーが目に入りました。
まだ試験の始めるまで一時間ぐらい余裕があったので、姪の気持ちが落ち着くようにと、コーヒーを飲んでいく事にしました。
姪は、コーヒーはあまり飲んだことがないと言ってクラムチャウダースープを頼んでいました。
私は姪を励まそうと何度か声を掛けてみましたが姪はうなずくだけでほとんど返事をしてくれませんでした。
「なにかあったらすぐ連絡してね、」と言って私は携帯の番号を紙に書いて渡しました。
姪は紙を受け取ると、筆入れの消しゴムの下にしまいました。
私は姪がスープを飲み終わってから大学の門まで送って行きました。
門の前では守衛さんが受験生の受験票を確認して、一人づつ中に入れていました。
付き添いは中に入れないので、私は門の前で姪と分かれて家に帰りました。
(3)
夕方になってもう試験も終わった頃姪から私の携帯に電話がかかってきました。
「済みません、気分が悪くなって、大学の近くで休んでるんです、迎えに来て下さい。」と
姪の小さな声が聞こえました。
場所を確かめると、大学の裏門の側の公園のトイレにいるらしいのが分かりました。
どうも朝飲んだクラムチャウダースープが身体に合わなかったのかもしれないと、救急箱から胃の薬を探し出してバッグに入れ、私は家を出ました。
途中地下鉄に乗って大学まで行く間も、試験はどうだったんだろう、お腹が痛くてろくに答えが書けなかったのではと不安な気持ちがどんどん大きくなっていきました。
大学の裏手に回って公園のトイレを探しましたが、姪らしい人影は見あたりませんでした。
私は別の公園だったのかしらと頭を巡らせましたが、ほかにトイレのある公園は思い浮かびませんでした。
私はもしやと思って身障者用のトイレのドアをノックしてみました。
すると、ドアの自動ドアがすっと空いて中の様子が見えました。
両側に手すりのついた便器に姪が座っているのが見えました。
しかし口には猿轡のようなものが押し込まれて、両手は手すりに縛られていました。
私はこれは大変だと思って、中に入りました。
するとすぐにドアが閉まり、ドアの陰に立っていた男が私を床に押し倒しました。
私は男を蹴飛ばして立ち上がるとドアから出ようとしました。
しかしドアの前には男が立ちはだかって、私はもう逃げ出すところがありませんでした。
私は男の顔に見覚えがあるのに気が付いてはっとしました。
朝地下鉄で一緒だった譲治さんに間違いありませんでした。
譲治さんは私が一瞬動きを止めた隙を見逃しませんでした。
私の腰にめがけて譲治さんが身体ごとぶつかってくると私は床に押し倒されました。
私の子宮は譲治さんに乱暴に扱われるのを待ち望んでいるように熱くなりました。
浜辺におしよせる波のように、欲望は繰り返し私の体に押し寄せては退いていきました。
しだいに激しさを増す欲望には抵抗する気力もなくなるほどの荒々しさがありました。
終わることのない永遠の時が、私の支配者に与えられた時間でした。
逃げることの出来ない、快楽の時が始まったことを、私は思い知らされました。
時計の針が止まると、永遠の時間が私の体を支配していました。
譲治さんが刻むリズムは最後の瞬間が近いことを私の子宮に告げると、準備のための痙攣を繰り返しました。
廃墟となって燃え続ける私の身体に、譲治さんは所有者の杭を誇らしげに打ち込み続けました。
(完)