No.10
(1)
礼子さんから電話がかかってきて、一緒にテレビに出ないかと誘われました。
テレビの番組で人妻を50集めて、ひな壇に並べて、押しボタンでアンケートを取りながら司会を進める番組でした。
なんでも、劇団にいる友達の百合絵さんに声がかかって、さしあたり人妻でもなんでもいいから人数を集めたいとの話しでした。
出演料はでないんだけど、記念品くらいはでると言われて、旦那に一応相談してみましたが、「別にでたいなら出てみれば」と素っ気ない返事でした。
当日はテレビ局のスタジオで礼子さんで待ち合わせしました。
控え室に通されると、劇団の友達も来ていましたが、ずいぶんと派手な服装でした。
他の出演者も大勢来ていましたが、なにかクラブのホステスのような感じで普通の主婦には見えませんでした。
時間が来ると私達は、収録のスタジオに案内されて、ひな段に並べられました。
ディレクターの人の指示で、私と礼子さんはひな段の端の目立たない場所に座りました。
リハーサルが始まると、司会の男性が「人妻のAV女優50人に集まってもらいました」、と話しを始めたので私はびっくりしてしまいました。
隣に座った礼子さんの脇腹を指でつっついて、「これ、どうゆうことなのいったい」と聞いてみると、「私もさっき分かったんだけど、私の友達ね、劇団しながらAV女優してるらしいのよ、せっかくテレビに出れたんだからしょうがないわよね」と諦めた顔で答えました。
もう番組のリハーサルが始まってしまったので、私達は諦めてAV女優の振りをして答えのボタンを適当に押しました。
インタビューに来られたら困ると思っていましたが、インタビューを受ける人はもう最初から決まっているようで、私達にマイクが向けられることはなくて一安心でした。
番組は30分番組なので、収録もすぐ終わると思っていたのですが、同じシーンを何度も取り直したり、出演者がなかなか来ないとかで待たされたりとかで、結局ずいぶんと夜遅くになってしまいました。
(2)
二人で夕御飯を食べていきましょうと礼子さんに誘われて、六本木のスペイン料理店で食事をしました。
「どう最近旦那とはうまくいってるの」と礼子さんが私に聞きました。
「退屈してるんじゃないの、旦那が相手じゃ、あの男パソコンオタクで、ほかになにもできないし、あっちの方だって、全然だめなんじゃないの」
と言われて、礼子さんも大学の頃とは随分変わったなと思いました。
「そうね、いまセックスレスなの家は、旦那はパソコンばかりだし」と私が答えると、「今日はちょっと遊んでいかない、一晩くらいいいでしょう、旦那以外の男とつきあっても」と言われました。
私はそれもいいかなと思いましたが、返事はしませんでした。
食事を終わると礼子さんが、「面白い店があるから寄っていかない、絶対後悔させないから」と言います。
私は何でもいいと思って礼子さんについて行きました。
細い道を曲がって、裏の非常階段を上がってマンションの入り口に連れて行かれました。
ドアを開けると受付になっていて、いかにも危ない雰囲気でした。
「ここはね、身分がしっかりしてないと、入れないのよ、それに紹介がないと入れないの」
と言って私は住所と名前を書かされました。
案内されて中に入るとまた細い通路を曲がりくねって進み、小さな待合室につきました。
待合室には椅子が数個おいてあり、その正面は大きな鏡でした。
「お待ちかね、今夜の人妻は、名門女子大出身で、遊びたいお金も欲しいという欲張り二人組、しかもレズときたら答えられませんね、二人一緒に落札していただきましょう」とマイクの声が遠くから聞こえてきました。
「ここね、セリクラっていってね、人妻専用なの、」
「これマジックミラーになっててね、あちらからは私たちが見えてね、それで好きな金額で競り落とすという訳ね、どう面白いでしょう、競り落とされるまで相手がどんな男性か全然わからないの、そこがまた面白くてね」
「あ、いやなら断ってもいいのよ、でもお金のためには断れないというのが、なんていうかゾクゾクしてくるでしょう。」と礼子さんが話してくれました。
私は礼子さんも随分と前とは変わったのねと思いました。
もしかして、私にぴったりの男性が現れるかもしれないと思い、誰が競り落とすのか確かめようと思って成り行きを見守っていました。
すると私たちは二人で5万で競り落とされたようで、高いのか安いのか私には見当が付きませんでした。
部屋をでると、また小さな通路を通って、別の出口で男性二人と対面しました。
いかにも好色そうな中年の男性の二人は、礼子さんとは顔なじみのようでした。
礼子さんは「ねえ、二人とも、あれはすごいのよ、テクニック抜群だし、スタミナ十分で、朝まででもだいじょぶなの、ぜったい経験するチャンスよこんな機会一生ないわよ」としきりに勧めてくれます。
私はなんだかすごい経験が出来そうな気がして、一緒にいく事にしまた。
礼子さんは慣れた様子で、運転手の隣の助手席に座りました。
男が一人先に後ろの席に乗り込むと、私は背中を押されて中央に座りました。
すぐあとからもう一人の男が席に着きました。
男が告げた行き先はラブホテルのようでした。
男の手が私の膝に伸びると、私の膝頭の感触を楽しむように動き始めました。
微妙な感覚に、私の膝が震えると、男の指先はさらに大胆に、巧みな動きを始めました。
思いもかけない感触が私の体の芯から広がり、泉のように溢れだしました。
頭の中まで、熱い奔流が流れこみ、私は半分夢のなかにいるかのように体が重くなりました。
やがてタクシーはラブホテルの建物に入りました。
中に入ると部屋の真ん中には丸い形をした大きなベッドがありました。
ベッドの上には、ピンク色のレース模様のシーツがかけられていました。
ベッドの上で紫色の照明が輝いていました。
壁際に大きな洋服かけがあり、いろいろな服がたくさん掛けてありました。
よくよくみると、セーラー服や、チャイナ服や、テニスウェアやスチュワーデスの制服など男の人が喜びそうな衣装でいっぱいでした。
男達は服をいろいろ品定めして、今日はこれでやってみようとテニスウェアを2着選んで私達に渡しました。
アンダースコートはピンク色のフリルが一杯ついたかわいらしいデザインでした。
私達がテニスウェアに着替えると男達は満足した様子で、デジカメを撮り始めました。
アンダースコートが見えるようにいろいろポーズを取らされた後、私と礼子さんはベッドで横になるように命じられました。
私と礼子さんは二人で並んで大きなベッドに横になり男達を待ちました。
逃げられない時は従うしかないと、子宮が命じる声が私の身体に響いてきました。
浜辺におしよせる波のように、欲望は繰り返し私の体に押し寄せては退いていきました。
しだいに激しさを増す欲望には抵抗する気力もなくなるほどの荒々しさがありました。
これが運命の決めた時だとあきらめの気持ちは、やがてあふれ出る泉を呼び起こしました。
逃げることの出来ない、快楽の時が始まったことを、私は思い知らされました。
私の体中に、欲望の電流が流し込まれて止まらなくなり、体中が許しを求めて震え始めました。
支配者に従属するのが女の宿命だと、私は心のそこから思い知らされました。
男が刻むリズムは最後の瞬間が近いことを私の子宮に告げると、準備のための痙攣を繰り返しました。
男の欲望は私の体を十分に楽しむと、ようやく最後の一撃で私を貫きました。